ピンク・フロイドとして20年振りの、そして事実上ラストアルバムとなった『THE ENDLESS RIVER / 永遠』。発売前の予約段階でゴールドディスクを確定させた事も大きな話題となりましたし、響きを重視した濃密なインストゥルメンタルの洪水に11月は感無量の思いで浸っていた方もきっと多かったのではないでしょうか。しかしその感動はまだ終わっていません。今週末は93年のスタジオジャムセッション音源を中心に前作『THE DIVISION BELL / 対』と『THE ENDLESS RIVER』の元となったアウトテイクを70分以上収録した驚愕のタイトルが、フロイドのレア音源専門Oenoneレーベル第2弾タイトルとして登場致します!!『THE ENDLESS RIVER』はもともと『THE DIVISION BELL』に収録予定だった20時間分のセッションを基に構成されている事は御承知と思いますが、今回本作に収録されたマテリアルの数々もその一部です。このうちレーベル第1弾タイトル『RARITIES (Oenone-001A/B)』に含まれていたものが数曲存在し、トラック(1),(3),(4),(5),(7)の5つがそれに当たるのですが、そのうちトラック3以外の4つは今回ノイズリダクション前のアップグレード音源を使用した事でサウンドのクオリティが格段に上がっています。更には約12%も速かった原曲のピッチを『THE ENDLESS RIVER』収録のピッチに準拠させる事で、正確なテンポで曲をお愉しみ戴けるようになっています。トラック3は『RARITIES』ではイコライズ処理のかかっていた状態でしたが、こちらもその処理がされる前の音源を使用し若干音の篭っていた左chの修正のみ行っていますのでよりナチュラルな音質をお愉しみいただけます。また『THE ENDLESS RIVER』がリリースされたことによって『RARITIES』では「Untitled」としていた殆どの曲名が判明しましたので、該当曲に関しても正しい曲名で表記しました。その一新された5曲の仕上がりにも御注目戴きたいですし、その他のトラックには今回初出となる興味深いトラックが並んでおり、話題のバンド最終作をより深く読み解ける内容となっています!!まずトラック(1)?(3)はその最終作『THE ENDLESS RIVER / 永遠』に収録された「Allons-Y」のアウトテイクです。短い原型フレーズと思われる(1)からじっと聴いていると、徐々に曲の表情が豊かになってゆくのが分かります。特にトラック(3)で聴けるものは『THE ENDLESS RIVER』に使われたテイクの93年オリジナル・バージョンとなっており、全く別物とも言える様な抑揚感と奥の深いドラマ性がサウンドに加わっている事が伺えます。トラック(4)は『THE ENDLESS RIVER』にも含まれなかった未発表チューンです。リックが残したベーシックなサウンドイメージにギルモアらしいギター・エフェクトが存分に効いたミドルテンポの佳曲となっています。ノイズリダクション前のunprocessedソース使用によって大幅にグレードアップした音像を存分にお愉しみ下さい。トラック(5)と(6)は「Anisina」のテイク違いが2種類楽しめます。(5)はまだまだ原石の生々しさが残るテイクで、キーボードのメロディラインとドラムのベーシックなアプローチが剥き出しになっている様子が生々しい印象を放っていますが、(6)ではこれにイントロが付き、キーボード・サウンドの変化に伴って音楽的な広がり・空間性が考慮されたバージョンとなっているのが御確認戴けるでしょう。トラック(7)と(8)は「TBS14」のアウトテイク2種です。(7)はまだベーシック・トラックの域を出ていませんが、しかしこの時点で既にギターの特徴的なディレイ・マジックが際立っている事がお分り戴けると思います。これが(8)になると一気に曲の完成度が高まっていることが聴いて取れますが、一番の違いは(7)ではフェイドアウトしていた部分から新たに展開部が出現している事でしょう(※2分25秒付近?)。ギター・カッティングの合間に入る旋律を、どこか暗闇から掴んで探るように入れてゆく様子は大きな聴きモノです。そしてトラック(9)?(12)は「Evrika」のテイク違い4つがお愉しみ戴けます。デモトラックという事もあるせいか質感的に弾力を感じる音像で、ベーシックに叩かれるリズムの中を情感込めて柔らかく歌うギターと、リックらしい音使いで立ち上がるオルガンの響きが序盤から交錯してゆく様子はこの初期テイクから鳥肌モノです。(10)では(9)の原型音からドラム・サウンドが大幅に変更された発展形が聴けるのですが、僅か45秒程度で演奏が中断し、サウンドの確認をしている会話シーンが含まれた生々しいトラックとなっています。(11)は(10)で中断したところからの続き、或いはリテイクといった感じですが今度は終曲まで通しており、揺れ動く旋律や響きの振動が生々しく伝わってきます。(12)は(9)で聴けたテイクの発展形といった感じで、ギターの後ろで鳴るキーボードの音色がいかにもリックらしい筆致で綴られてゆく様子に注目です。それはまさに原型である(9)への再接近と新たな挑戦が感じられるトラックとなっているのです。トラック(13)は現在プレミア化している94年リリースのアナログ盤『THE DIVISION BELL』でのみ聴くことが出来る別編集バージョンです。1分35秒?1分50秒に本来2番目の歌詞が挿入されており、歌詞を一部カットすることでCD版より20秒ほど短くなっているのが特徴です。トラック(14),(15),(16)の3つはレーベル第1弾タイトル『RARITIES』のリリース後に発掘された新音源で、『THE DIVISION BELL』に収録されていたものとは完全な別テイク。元々はこの3曲が組曲となっていたようで、曲の成り立ちに肉迫出来る大変興味深いトラックになっています。尚、トラック(16),(17)はタイトル不明の為に「Untitled」とナンバリングしていますが、このトラック(17)は(16)と同じテイクのミックス違いです。1995年に英国で放送されたドキュメンタリー番組「The Colors Of Infinity」でギルモアが書き下ろした曲を提供していたのですが、その中でこの『THE DIVISION BELL』のアウトテイクがひっそりと使われていました。音源自体は既発盤『A TREE FULL OF SECRETS』で登場していますが、途中で番組のインタビューの声が被ってしまうものの今回収録の音源は大幅アップグレードとなっています。トラック(18)はフランスのプロモ盤でしか聴くことの出来ない「Take It Back」のロングバージョンです。これを聴くと『THE ENDLESS RIVER』の新曲「Sum」はこの「Take It Back」のエンディング部分で聴こえるファルフィッサオルガンの音源をマッシュアップして作られているのがよく分かるでしょう。(19)にはボーナストラックとして94年のツアーより「Money」のリハーサルをサウンドボード音源で収録しました。トレーダー間で極僅かに流通したカセットテープから起こされたもので、カセットには"Oddments"とだけ書かれた日付不明のリハーサル音源です。いかにもリハ音源といった感じの音像ですが女性コーラス隊の声やサックスもしっかり入っており、当時のスタジオ風景を終曲までじっくり愉しませてくれる嬉しいボーナスとなっています。これら未発表のテイク違いと接することで得られる醍醐味は、やはり作品本来の姿への接近とその可能性に触れられる事に尽きると思います。レコーディングされたアルバムは記念写真と同じですから澄ました音で記録されますが、しかしそこに至るまでのワーキング・テープを聴く事で得られる驚きはそれぞれの曲に別の視点を与えてくれますし、何故そうした表情でそこに記録されていたのかを追ってゆくことで楽曲やアルバムとの接し方を一層深められる嬉しさもあります。ましてやアルバムに含まれなかった曲とも出会えるのですから、その興奮と興味深さは計り知れません。今週末はそれらレコーディング途上で様々な表情を見せていた各曲を、最高の音質でバラエティ豊かに封じ込めた本作で是非御体験下さい。『THE ENDLESS RIVER』で示されたフロイド最後の深い"河"の流れが、どれほど多岐に渡る支流から形作られてきたのかを噛み締められるOenoneレーベル渾身の一作です!! Unreleased high quality outtakes of "The Division Bell" & "The Endless River" (77:50) 1. Allons-Y (Outtake #1) 2. Allons-Y (Outtake #2) 3. Allons-Y (Outtake #3) 4. Untitled #1 (Outtake) 5. Anisina (Outtake) 6. Anisina (2014 Alternate Mix) 7. TBS14 (Outtake #1) 8. TBS14 (Outtake #2) 9. Evrika (Outtake #1) 10. Evrika (Outtake #2) 11. Evrika (Outtake #3) 12. Evrika (Outtake #4) 13. Wearing The Inside Out (1994 LP Version) 14. Cluster One (Outtake) 15. Marooned (Outtake) 16. Untitled #2 (Outtake) 17. Untitled #3 ("The Colors Of Infinity" Version) 18. Take It Back (French Promo Single) Bonus Track 19. Money (1994 Live Rehearsal)