本作は、1986年の大代表作「TRILOGY」に伴う、イングヴェイ3回目(ソロでは2回目)の日本ツアー。その東京2日目です。この日は「午後の部」と「夜の部」の2回公演だったのですが、ディスク1・2に「午後の部」、ディスク3・4に「夜の部」を収録しています。本作のスペシャルな凄みとは何なのか。いろいろとあるのですが、ここで申し上げたいのは、①名盤「TRILOGY」を創り上げた超・超・絶好調のイングヴェイが聴ける、②その名盤「TRILOGY」を大量に演奏している、③世界一イングヴェイを愛している日本のオーディエンス、④もの凄い高音質、⑤幻の名手ウォーリー・ヴォスの演奏が聴ける……の5つです。①②③は、聴く前から想像が付くと思いますが、聴いて驚くのは④。特に、ディスク1・2の「午前の部」の高音質ぶりは半端ではありません。グダグダ書いていったらキリがないほど総ての楽器が完璧なサウンドボード級。音の良さはいつでもどんなバンドでも大切ですが、イングヴェイの場合は特に重要。なにしろ全編に渡って圧倒的に弾き倒すヒトですから、ダンゴや爆音では、ストレスが溜まって耐えきれなくなってしまう。ところが、本作のサウンドは、ピッキングの1つひとつまで恐ろしく綺麗に録音されているので、凄まじい速射も快感に直結するのです。\しかも、その速射をぶちかましているのが交通事故(1987年)に遭う前の大全盛期イングヴェイ。正確無比ながら滑らかでワイルド、そして歌心溢れた速射のなんと気持ち良いことか……。ポール・ギルバートやクリス・インペリテリ、ジョン・ペトルーシなど、イングヴェイよりも速く、正確に弾くギタリストはいくらも出てきましたが、この頃のイングヴェイほどギターを歌わせながら弾き抜くギタリストはついぞ現れませんでした。「Icarus' Dream Suite Op. 4」の艶々としたサウンドで響くチョーキング、ヴィヴラートの豊かな美しさ。ここに②の超名曲群が並ぶだけで、「“YNGIWE IN JAPAN”の最高傑作」は保証されたようなものですが、さらに知る人ぞ知る、凄まじい事実が加わるのです。それが⑤のウォーリー・ヴォス。一般には「そんなツアー要員もいたねぇ」くらいだと思うのですが、彼はまさに幻の名手なのです。決してふざけたり、宣伝のために適当な事を言っているのではありません。イングヴェイ・バンドでは何ひとつ録音を残さず、ホジキンリンパ腫に冒されて1992年に34歳の若さで病死してしまったウォーリー。それゆえ、ほとんど知られていませんが、彼が参加したジョーイ・タフォーラの「OUT OF THE SUN」で聴かせたベースは驚異的。マニア筋に「マカパインの1stで弾いたビリー・シーンより凄い!」と言わせるほどなのです。もし、覚えのない方は、今すぐタフォーラの「Eternity's End」をYoutubeでチェックして、後半のベースソロにぶっ飛ばされてください。本作の高音質ぶりは、そんなウォーリーのベースまでしっかりと捉えきっているのです。もちろん、唯我独尊のイングヴェイですからベースがギターを凌駕することはありませんし、思い切った見せ場もありません。しかし、ギター速射が縦横無尽に駆け回るにも関わらず、ベースもくっきりと聞こえ、名手の名に恥じないベースを奏でている。なにしろ、存命中にほとんど作品を残せなかった(恐らく、タフォーラを含めて2枚だけ)名手ウォーリーの生演奏が残されていた。しかも、ネオクラの頂点たるギターと曲が満載のライヴ、かつ、そのベースが克明に分かる超高音質で聴けるのです。当時、イングヴェイとビリー・シーンがバンドを結成するというニュースが話題にもなりましたが、それと同等の演奏(本当にビリーだったらもっと目立つでしょうが、イングヴェイがそれを許すわけがない……やっぱり無理な話だったんでしょうね:笑)がすでに日本でも繰り広げられていた。これが最高傑作ではないはずがないのです! 凄まじい超高音質の「午後の部」ディスク1・2に比べると、「夜の部」のディスク3・4は、半格落ちる高音質。それでも普通ではなく、ヴォーカルもギターも素晴らしく鮮やか。1日2回公演だというのに、どちらもジェフ・スコット・ソートの歌声は力強く素晴らしい。マーク・ボールズが来なかったことで「代役」イメージが強くなってしまいましたが、どこまでも熱く、タフに歌い込むジェフの方が好きな方も多いのではないでしょうか。この「TRILOGY」の来日公演はマーク・ボールズが来なかったために軽視されがちです。しかし、実際に耳にすれば、そんなことはどーでも良くなるほど、素晴らしいネオクラの頂点世界が広がるのです。まだ体験されていない方、この駄文が大袈裟に思えて仕方ない方、ぜひこのチャンスに自身の耳でご確認を! Live at NHK Hall, Tokyo, Japan 9th November 1986 Afternoon Show Disc 1 1. Intro. 2. Liar 3. Queen In Love 4. Fury 5. Far Beyond The Sun 6. Kojo No Tsuki 7. Fire 8. Keyboards Solo 9. Soldier Without Faith 10. Icarus' Dream Suite Op.4 11. I Am A Viking 12. Guitar Solo Disc 2 1. Member Introduction 2. You Don't Remember, I'll Never Forget 3. Trilogy Suite Op.5 4. I'll See The Light, Tonight 5. Black Star 6. Too Young To Die, Too Drunk To Live Live at NHK Hall, Tokyo, Japan 9th November 1986 Evening Show Disc 3 1. Intro. 2. Liar 3. Queen In Love 4. Fury 5. Far Beyond The Sun 6. Kojo No Tsuki 7. Fire 8. Keyboards Solo 9. Soldier Without Faith 10. Icarus' Dream Suite Op.4 11. I Am A Viking 12. Guitar Solo Disc 4 1. Member Introductions 2. You Don't Remember, I'll Never Forget 3. Trilogy Suite Op.5 4. I'll See The Light, Tonight 5. Black Star 6. Too Young To Die, Too Drunk To Live Yngwie Malmsteen - Guitar Jeff Scott Soto - Vocals Jens Johansson - Keyboards Wally Voss - Bass Anders Johansson ? Drums