時代の栄光に包まれた“BRAIN SALAD SURGERY TOUR”。その終盤を伝えるスティーヴ・ホプキンス録音がまさかの新発掘。ホプキンスと言えば、もはや説明不要の伝説的な名テーパー。PINK FLOYDの超傑作『BOSTON 1975: UNPROCESSED HOPKINS MASTER』『BOSTON 1977 MASTER TAPES』を思い出される方も多いことでしょう。かの名匠がてがけたEL&P。まさか、そんな録音が44年も経って登場するのとは……。そんな本作に刻まれているのは「1974年7月29日プロヴィデンス公演」。まずは、本作が吸い込んだ大気がいかなる時代のものだったのか、ツアー全体像の中から確認してみましょう。 【1973年】・3月30日-5月4日:欧州#1(22公演)《11月19日『恐怖の頭脳改革』発売》・11月14日-12月18日:北米#1(30公演)【1974年】・1月24日-4月6日:北米#2(35公演)※公式盤・4月18日-6月2日:欧州#2(29公演)・7月26日-8月21日:北米#3(17公演)←★ココ★ これが現在知られている“BRAIN SALAD SURGERY TOUR”の概要。当時の記録にあやふやな点もあるので公演数までは厳密ではありませんが、おおよその流れや規模はイメージしていただけるのではないでしょうか。このツアーと言えば、伝統の『LADIES AND GENTLEMEN』やカリフォルニア・ジャムといったオフィシャル記録が基準となるわけですが、それは「北米#2」。本作のプロヴィデンス公演はそれよりグッと終盤に寄った「北米#3」の4公演目にあたるコンサートです。このショウは以前からコアマニアの間では録音が知られていましたが、本作はそれとは異なる。130分弱だった従来マスターよりもグッと長い140分を超える新マスターなのです。単に長尺・新発掘なだけも永久保存即決なのですが、それ以上に衝撃なのが、伝説的名匠によるサウンド。今回登場したのは、ホプキンス本人が自ら大元のマスター・カセットから直接デジタル化したマスター。限りなく現場のヴァイヴそのものを感じ取れる鮮度だけでなく、本人だからこその端正なトランスファーで絶品のサウンドが実現しているのです。実際、本作の透き通った空気感には言葉もない。事実としてはオーディエンス録音ではあるものの、大歓声が遠く小さく捉えられ、バンドとレコーダーの間に入ってこない。真っ直ぐ届く楽音は極めてクリアで、今なきエマーソンの指先も、グレッグのゴリゴリしたベースランも鮮やかに感じ取ることができるのです。しかも、安定感も絶品。前述した通り140分以上の長尺録音にも関わらず、クリアな空気感が終始揺るがず、ビシッと安定。『LADIES AND GENTLEMEN』には収録されなかった展覧会の絵も「Finale」まで艶やかで端正なサウンドが続き、終演BGMもしっかり収録。大団円の現場ムードをじっくりと味わわせてくれるのです。エマーソンの独演の「Piano Improvisations」では、1977年のライヴでお馴染みの「Maple Leaf Rag」も登場!(当然、『LADIES AND GENTLEMEN』にも未収録)「北米#3」と言えば、オフィシャル・ブートレッグ化されたバッファロー公演も有名ですが……もはや比較にもなりません。まさに伝説と呼ぶに相応しい匠の銘品なのですが、原音には極々わずかながら欠点も見受けられました。(恐らくは録音ポジションが原因となる)ステレオ感の偏りと、やや強めの低音の会場反響。もちろん、通常であればまったく問題ない次元ではあったのですが、名匠の新発掘だけに究極のカタチで永久保存したい。僭越とは感じつつもバランスを微調整し、ライヴアルバムとしてのクオリティを極限まで追及させていただきました。もちろん、美しい鳴りは原音そのままであり、無理矢理なイコライジングで気品を損なうマネは一切しておりません。そのサウンドで甦った絶頂期のEL&Pの素晴らしさと言ったら……。もちろん、特別レアな曲などはありませんが、そんなものは必要ない。究極的な名作を残し、地球を2周も3周もすつような成功を収めた時代の寵児たちの頂点演奏。この素晴らしすぎる音楽にどんな言葉を投げかければ良いのでしょう。本生100%サウンドの体験版『LADIES AND GENTLEMEN』……いえ、それ以上。人類が生み出し得たキーボード・トリオの究極バンドと、伝説の名匠が居合わせた現場。その時、その場の振動をそっくり吸い込んだマスター・サウンドがスピーカーから吹き出す銘品中の銘品なのです。ただの素晴らしいライヴアルバムという次元冴えも超え、ロックの文化遺産と呼ぶしかない1本。 Live at Providence Civic Center, Providence, RI. USA 29th July 1974 PERFECT SOUND Disc 1 (63:18) 1. Intro. 2. Hoedown 3. Jerusalem 4. Toccata 5. Tarkus 6. Take A Pebble 7. Still...You Turn Me On 8. Lucky Man Disc 2 (79:40) 1. Piano Improvisations incl. Friedrich Gulda's "Fugue" & Scott Joplin's "Maple Leaf Rag" 2. Instrumental Jam 3. Take A Pebble (Conclusion) 4. Karn Evil 9: 1st Impression incl. Drum Solo 5. Karn Evil 9: 2nd Impression 6. Karn Evil 9: 3rd Impression 7. Pictures At An Exhibition