現在ビートルズマニアの間で話題を呼んでいるのが1963年12月7日に収録されたBBCテレビ・ライブ「IT’S THE BEATLES」のアッパー版。この音源はアナログLPの時代に当時の放送をテレビのスピーカーから拾って録音したものが登場し、ファンの間で知れ渡っていたもの。よってエクセレントなレベルではないものの、それなりに聞き込める音質ということ、さらに1963年としては最長のライブ・ステージを捉えた音源という大きな価値がありました。ところが21世紀に入り、放送をスピーカーからではなく、テレビにジャックを繋いたライン録音バージョンが二種類も発掘されました。1963年のビートルズ人気勃発当時、ファンの子供たちがわざわらテレビからライン録音を敢行してみせたという点は称賛に値するものでしょう。さすがにライン録音によって放送を収録した音源のクリアネスは素晴らしく、当然のように以前のスピーカー音源から取って代わる存在へと君臨。ただし近年発掘されたライン音源はそれぞれに欠損やドロップアウトがあり、そういった部分をお互いの音源で補填してみせた、あるいは先のスピーカー録音までも用いて補填していた程でした。 今回の音源が特筆すべき点としては、そうした欠損が一切なく、オープニングからエンディングまで完全に録音されているということ。それに音質の鮮度やクリアネスも過去最高を誇ります。とどめはエンディングの「From Me To You」インストゥルメンタル終演時、局のアナウンスが入る場面を初めて聞けれるようになったという過去最長収録をも誇ります。 もっとも今から55年前(!)の録音ですので、随所でヒスノイズが目立つのは事実。それでもなお、この音質は十分にエクセレントなレベルですし、ましてやLP時代(「YOUNGBLOOD」や「DECEMBER 1963」など)とは隔世の感があるクオリティ。イギリスでビートルマニア現象が起こった直後、熱狂する観客(ファンクラブ会員を集めたのだからなおさら)を前にして白熱の演奏を聞かせてくれるのが1963年のビートルズならでは。ちなみにリンゴが歌う「Boys」では彼の歌声が聴き取り辛いバランスとなってしまいますが、これはロックコンサートの撮影収録に慣れていなかったBBCの不手際によるもので、現在ならネットで炎上してしまう事態でしょう。おまけにBBCはこの放送のビデオテープを後に編集実習の教材に使って切り刻んでしまったという。よって本放送の映像は断片的なものしか存在しないのもマニアには有名な話。それだけにステージのすべてを捉えたこの音源の価値は非常に高い。そんな放送のアッパー版音源ですし、過去最高の音質かつ過去最高の長さで収録された音源です。 Live at Empire Theatre, Liverpool, UK 7th December 1963 (28:51) 1. From Me to You 2. I Saw Her Standing There 3. MC 4. All My Loving 5. MC 6. Roll Over Beethoven 7. MC 8. Boys 9. MC 10. Till There Was You 11. She Loves You 12. MC 13. This Boy 14. I Want to Hold Your Hand 15. MC 16. Money 17. Twist and Shout 18. From Me to You (Instrumental)