パース初日のYouTube音源の後もまだかまだかと待ち続けた「純正」オーディエンス録音は11月5日のメルボルンが登場しました。オープニングのSEからズシリと迫力あるクリアネスはさすがリアル・オーディエンス録音、それだけでクオリティの高さを確信させる見事な録音状態。ミックのボーカルだけでなく、バンド全体のオンな音圧にも感動させられること間違いなしです。この日のオープニングは今回のオーストラリア・ツアーでこの位置で演奏されることが多かった「Jumping Jack Flash」から始まっています。2003年武道館もそうでしたが、この曲からのオープニングとなれば1969年や70年といった黄金期を彷彿させるものがあり、それだけで胸が高鳴るパターンと言えるでしょう。ところが…どうしたのでしょうか、ミックはここでいつものメロディ・ラインを下げた調子で全編歌っており、そのあまりの抑揚のなさに驚きを禁じ得ません。それどころかこのメロディ・ラインを下げた奇妙な歌い方はその後も続き、ロニーもそれに釣られた訳でもないだろうに「You Got Me Rocking」の間奏での音の外し方にはひどいものがあります。そう、ミックの咽頭炎によって11月8日のハンギン・ロック公演が延期となった訳ですが、その不調が既にこの時点で彼に起きていたことがはっきりと伝わってくるのです。ミックからすれば「どうも喉が痛いが、今日のライブをこなせば二日間はオフだ」という気持ちがあったのかもしれません。そんな変調を感じつつもステージに上がったミックではありましたが、いざライブが始まってみれば、あれよあれよと不調の波に飲まれてしまい、何とかして喉をかばった歌い方で押し通す涙ぐましい姿が捉えられています。ライブ前半の数曲を聴いただけでもただならぬミックの不調ぶりが伝わってきますが、それだけで終わらないのがミックやストーンズの凄いところ。「Wild Horses」はその静かな曲調が功を奏し、それでいてここでのミックの抑えたソフトな歌い方と相まって非常に素晴らしい演奏となりました。彼の歌い方が曲にここまでフィットしたのは正に怪我の功名。しかもヨーロッパではこの曲に勢いがつき過ぎたきらいがあったのですが、ここでは再び東京ドームの時のような抑えが聴いたバックの演奏もまた素晴らしいものです。ただし、その前のミックのMCはまるで葬式のような暗さ…いやはや、困ったものです。しかし事態はさらに深刻に。この後のミックには「Doom And Gloom」という激しい曲調が待ち構えていたのです…ところがミックは一番で奮起、ここまでの不調ぶりを考えれば驚くほど元気に歌ってみせたのですが、そんな努力も虚しく終わり、歌が二番、三番と進むごとにミックからどんどん力が失われてしまいます。三番などは一歩間違えたら別の曲に聴こえてしまいそうなくらい。次の「Street Fighting Man」などもまるで外人のカラオケを聴いているかのようです(苦笑)。こんな状況で比較的最近の曲である「Out Of Control」になると、うまくごまかしが効いていると言えばよいのでしょうか、あまり辛そうには映りません。それに歌い慣れた「Honky Tonk Women」を済ませばキース・コーナーで喉が休められる。この辺りななかなかの調子です。とはいえ、激しい「Midnight Rambler」ではそんな休憩もミックの慰めにはならなかったようです。またしても覇気のない歌。こういう曲でミックがメロディ・ラインを下げて歌ってしまうと、どうにも締まらない演奏となってしまいます。実際にミックの声が辛そうな場面まで登場するほど。そんなミックを前にバンドの演奏もパースの時の白熱が嘘のような煮え切らなさに終始してしまうのですが、終盤だけテイラーの奮起したようなプレイが聴かれた点はなかなかに感動させられる場面でしょう。そしてこの後のミックはと言えば、それはもう抑揚と覇気のない歌のオンパレード。それは彼が劇的に歌い方を変えてしまった1981年ツアー中盤以来の衝撃か?「Start Me Up」やラストの「Satisfaction」などはミックの歌が今にも消え入りそうなほどで、普段ならアゲアゲ大会となるライブ後半の場面だとはとても思えません。そんな風にミックの存在感がどんどん薄くなってしまう一方で、今回病欠のボビー・キーズに代わって参加したカール・デンソンのサックスが「Miss You」や「Brown Sugar」でじっくりと聴ける点は別の魅力だと言えるでしょう。ボビーをリスペクトしたプレイには好感が持てます。それにしても、こうしてようやく登場した音源が極上音源であったのと裏腹に、ミックが不調に喘ぐ様子も生々しく捉えたドキュメントだったとは…そんな衝撃音源がリリースされます。とにかく近年まれに見るミックの不調ぶり、これでは次の公演が延期されてしまうのも納得でしょう。 Live At Rod Laver Arena, Melbourne, Australia 11.05.2014 Disc 1 (72:01) 1. Intro 2. Jumping Jack Flash 3. You Got Me Rocking 4. It’s Only Rock’n Roll 5. Tumbling Dice 6. Wild Horses 7. Doom And Gloom 8. Street Fighting Man 9. Out Of Control 10. Honky Tonk Women 11. Band Introductions 12. Before They Make Me Run 13. Happy 14. Midnight Rambler (with Mick Taylor) Disc 2 (53:01) 1. Miss You 2. Gimme Shelter 3. Start Me Up 4. Sympathy For The Devil 5. Brown Sugar 6. You Can’t Always Get What You Want (with The Consort Of Melbourne) 7. Satisfaction (with Mick Taylor)









