名録音・名音源というものはすべからくして数々のタイトルを生み出します。しかしどこかにマスターが存在している限り、ジェネを重ねたものはいつか後手に回る運命にあるものです。我らがピンク・フロイドの音源とてそれは逃れられず、ANIMALSツアーの最終章となる1977年7月2日、ニューヨーク・MSG公演4DAYSの2日目を超高品質オーディエンス録音で収録したあの名音源も、遂にその時がやってきた様です。本公演はこれまで『PROG KING (Sirene-099)』や、その飛躍的なアッパー版として親しまれてきた『DAY OF THE ANIMALS (Sigma 77)』がその最たる地位を獲得していましたが、つい先日、当Sigmaレーベルは独自のルートでそれらのタイトルに使われた真のマスターテープと接触する機会に恵まれました。元々この録音は77年北米ツアー屈指のものとしてファンにはお馴染みのものでしたが、その大元となるマスターカセットに記録されたサウンドとは一体どんなものなのか・・。広く知られた名音源であるが故にその想像は膨らむばかりでしたが、それは予想した通り、いや予想以上に秀逸過ぎる極上音質だったのです! そのストレートな高音の音抜けの良さ、近くて振幅の深い響き、スケール感満点の厚みと密度の高い重みを自然に出す中?低音の迫力は、一聴してその場に居たレーベル関係者全員を唸らせました。本作はこの真のマスターカセットから一切の劣化無く24bit / 96khzでデジタル・トランスファーさせたものとなっており、まさに当時会場で記録されたサウンドそのものが目の前に現れる驚きのアッパー版タイトルとなっているのです!!勿論、トリートメントと調整も細心の注意を払って施してあります。収録音は凄まじく上質でしたが全体的に或る程度のピッチの狂いやノイズの発生箇所がありましたので、そこは原音に影響を与えないよう丁寧な音像調整と補正を施してあります。また予め分かっていた「Shine On You...Pt. 6-9」後半のジャム部分のカット(※90分テープの反転箇所。12分30秒?13分43秒付近)は同日のセカンドソース音源で丁寧に補填し、本作も曲中の流れを途切らせずシームレスで聴き通せる様に仕上げてあります。これら原音の魅力を最高値で惹き出す仕上がりにしたのは、周知の通りこの日は演奏内容にも素晴らしいものがあるからです。最終日6日のモントリオールと違ってロジャーが怒ったり、ギルモアが演奏を放り出してPA卓から眺める事も無くショウを通して理想的なステージングをしていますが、それらが各既発盤以上のサウンドで出てくる興奮は計り知れません。まず「Sheep」ではエッジの効いたサウンドが立ち上がり、メタリックなギターサウンドに先導された曲がグイグイと推進力を上げてゆく様子が鮮やかに広がります。エコーの残響も淡い音まで拾っているうえ、リズムラインのタフな響きもこれまで以上にリアルな音で現れますので1曲目から深い聴き応えをお感じになること請け合いです。「Dogs」は3分22秒から入ってゆくツインギターの音色がどちらも非常に近く、お互いに蕩けるような旋律を官能的に響かせ合う様子がこれまで以上の解像度で飛び出してきます。またこの曲は静と動を繰り返す構造を取っていますが、静かな部分、つまり殆どリズムレスの中に見える微かな響きや弱音の単旋律、或いはその中から浮き上がってくるキーボードの広がり(※8分44秒?ほか)では、その湿り気のある響きが過去最高の艶と鮮明さを伴って現れるので、この時期のフロイドが持っていた音楽的な裾野の広さも確かな手応えで感じ取って戴けるでしょう。「Pigs On The Wing Pt. 2」では前半の静かな部分での透明度、及び後半で歌い出すギターの近さと解像度が向上している点に注目で、演奏というよりは音楽そのものがグッと近付いてくる興奮を味わって戴けると思います。「Pigs (Three Different Ones)」は透明度を増した間近な音像が演奏に更なる具体性をもたらします。この日は6分40秒付近からSE(冒頭で出てくる豚の鳴き声?)が鳴っていたり、爆竹・パイロがいつになく大量に使われ終盤まで随所で炸裂するのも特徴ですが、これらの音も迫力の音で現れるため他日演奏との違いと興奮をより一層高めてくれる筈です。「Shine On You...Pt. 1-5」も24bit " でデジタル変換された濃密な音楽が耳元に広がります。ギターが出す曲の主題となる4つの音が少しずつ表情を変化させ、やがて音のグラデーションの中からまろやかな歌唱旋律が動き始める後半ではフロイドが(或いは、音楽そのものが)詞を解放するマジカルな瞬間を最高値で味わって戴けるでしょう。またこの日、ロジャーがやや早口で歌唱している印象がある「Have A Cigar」もこれまで以上に曲の構造がよく見えるサウンドで飛び出すのですが、これを聴くと掛け合ったり木霊したりという音響効果の狙いを曲が秘めていた事が伺え、この曲に対する新たな知見と可能性が感じられる音像も魅力となっています。「Wish You Were Here」ではツインで鳴らされるアコギによる幅の広い響きが見事に浮き出し、その旋律がより純粋な美しさで輝いているのをお感じになるでしょう。コーラスのハーモニーと、それに続いて出てくるギターソロや素朴なエレキピアノの響きも素晴らしい輝きを放っていますので是非御注目下さい。「Shine On You...Pt. 6-9」ではスライドギターの鋭い音色が縦横無尽に駆け巡る様子が質感高いサウンドで浮き上がります。主題への回帰後もまろやかに音楽が綴られ、響きの新たな出逢いを求める様なジャムが過去最高の音像で現れる様子にもアッパー感を感じて戴けると思います。尚、マスターに起因する曲後半の部分的なカット(※90分テープの反転箇所)については前述した通りで、シームレスに聴き通せるように仕上げてあります。「Money」は周囲の透明感が上がった事でボーカルに掛けられた弱めのエコーとその拡散が一層明瞭に聴いて取れるでしょう。音群移動装置による効果としてギターサウンドが近くなったり遠のいたりしている様子も伺えますが、収録位置が程好い位置にあったのか会場に響いていたであろう全体のサウンドを上方から俯瞰した様な音像で追えるので、その鳥観的な音の反響も更なる明瞭感を伴ってお愉しみ戴けます。「Us And Them」も浮遊感漂う中で揺れ動くメロディラインが質の高い音像で耳に届き、彩りを与えているサックスも音域を広く動く様子が芯のある音色で出てきます。マスターにあった2分26秒?29秒にあった僅かな欠落も「Shine On You...Pt. 6-9」同様に同日のセカンドソースから補填し、流れを途切らせずに聴き通せるようになっています。真のマスターテープに記録された音像でその日の演奏を体験出来る喜びは、これまでジェネを重ねた音源でそれを長く体験してきた方であればこそ「やっと辿り着いた・・」という或る種の到達感のようなものがあると思います。勿論、既発盤を知らずに初めてこの音像に触れる方にとってもそれは目覚しい体験となりますが、しかしその日の録音ソースの頂点に触れる事により、音質の不鮮明さから生じていた演奏の抽象性をブレの無い具体的な音に変換する喜びは、これまでのソースの音を体験していればこそ思いもひとしおだと思うのです。これは今週末に本作と同時リリースされるもうひとつの77年代表作『OAKLAND 1977 1ST NIGHT (Sigma 124)』も同じで、どちらも「やっと辿りついた・・」という深い喜びの爪痕を聴く側に残してくれるタイトルとなっています。今週末は是非『OAKLAND 1977 1ST NIGHT』と併せて、本作もお試し下さい。マスターカセットから24bitデジタル・トランスファーされた劣化の一切無い音像が、この公演の魅力を一から塗り替えてゆく驚きに立ち合える極上タイトルです。 Live at Madison Square Garden, New York City, NY. USA 2nd July 1977 TRULY PERFECT SOUND The 24 bit digital transfer from the original master cassette tapes Disc 1(51:53) 1. Sheep 2. Pigs On The Wing Pt. 1 3. Dogs 4. Pigs On The Wing Pt. 2 5. Pigs (Three Different Ones) Disc 2(72:49) 1. Shine On You Crazy Diamond Pts. 1-5 2. Welcome To The Machine 3. Have A Cigar 4. Wish You Were Here 5. Shine On You Crazy Diamond Pts. 6-9 6. Money 7. Us And Them