『OAKLAND 1977 1st NIGHT』、及び『NEW YORK 1977 2nd NIGHT 』はもうお愉しみ戴けましたでしょうか。ネットアップ後から多くの反響を戴き、実際にその音を聴かれた方からも高い評価を賜りまして当レーベルとしても大変嬉しく思っております。今回は先週のその2タイトルに続く24bit / 96khzデジタル・トランスファー・シリーズの第3弾として、アルバム『THE WALL』に伴う1980年米国公演の頂点を極めたあの名音源が遂に登場致します! これは80年2月24日?28日に5夜連続で行われたニューヨーク州ナッソー・コロシアムの最終公演を超高音質オーディエンス録音で完全収録したもので、アナログ・ブートレッグLPの時代から名音源・名録音として誉れ高い評価を受けてきたものです。Sigmaからも2008年に『YOUR FAVOURITE DISGUISE 』のディスク3と4でまず音盤化され、その後2009年10月には録音者本人から借り受けたマスターテープ(Maxell XLIIが2本)をダイレクトに音盤化した『DEFINITIVE WALL』をリリースし、その圧倒的なクオリティでファンから多くの反響を賜りました。今回はそれを再度借り受け、レーベル所有の最新機材で24bit / 96khzのデジタル・トランスファーを施し、収録原音が持つ艶と鋭さを重視しながら原音に影響が出ないギリギリのノイズ除去とピッチ補正を含む最新リマスターを決行しました。高スペックでデジタル変換させた事でマスターサウンドからの劣化が一切無いその仕上がりは驚異的なものとなり、余りの音質の良さにレーベルのスタッフ達も息を飲んだほどです。その音像の艶と鮮度の良さは、大元となった真のマスターカセットが、たったいま場内での録音を終えてデッキ(※SONY TC-D5M)から取り出されたばかりの状態を甦らせたと言っても過言ではありません。当時大きな反響を戴いたあの『DEFINITIVE WALL』よりも更に高い明瞭感とパンチで音が現れ、音域の広がりや音圧など全ての分解能に優れた究極の80年ナッソー・コロシアムがここに誕生したのです!!ディスクはイントロとなるショウスタート前のMCから収録が始まっていますが、このシーンから既に『DEFINITIVE WALL (以降、"既発盤"とします)』で聴けた音像よりも臨場感に充ちているのがお分り戴けるでしょう。直後から始まる「In The Flesh ?」では鋭くて肉厚なサウンドが立ち上がり、曲の表情の豊かさが既発盤以上に際立ちます。"ピンク"の誕生となる「The Thin Ice」でのピアノも奥行きと芳醇さを更に深く感じさせ、後半の重厚なサウンドに回帰するシーンも全く歪む事無く静音から強音にシフトしている様子から、収録音の質の高さをますます感じて戴けるでしょう。「Another Brick...Part 1」では第一主題の周囲で装飾されるサウンドコラージュが明瞭に出ているうえ、その演奏が「The Happiest Days」の中盤から激しく豹変して「Part 2」へ繋ぐ様子もギターの鋭い出音とリズムとのブレンド感が過去最高の濃密なサウンドで現れます。シーンが変わる「Mother」ではアコースティックの響きと歌唱が一段と情緒豊かに綴れ合う様子が耳を惹きますが、空間性を感じさせながらも微細な音まで確実に聴こえる為、それぞれの楽器と歌声が華やかに溶け合う様子が存分にお愉しみ戴けると思います。「Goodbye Blue Sky」は曲の特徴でもあるコーラスの鮮やかさと、後半で入る風の装飾音との対比が絶妙の音像で出てきます。これにより"ピンク"が負った傷心がより近いものとして感じられ、この日の音楽的表現のデリケートな側面を存分に再確認して戴けるでしょう。また時間が余裕が無いコンサートではセット落ちする事もあった「What Shall We Do Now」はこの日ちゃんとセットに入っており、小曲ながらも凄まじい音の洪水が24bit / 96khzならではの威力あるサウンドで出てきます。「Young Lust」は曲が持つ心象描写が一層真に迫って感じられるようになり、"♪ Wo?wow "と旋律をダイナミックに揺らしながら広い音域を音楽が動いてゆく様子に心躍ると思います。「Don't Leave Me Now」も前半の沈み込む様なロジャーの歌唱と途中から変貌する躍動感に充ちた演奏の対比が更に眩しく感じられるようになり、「Another Brick...Part 3」ではライブ版ならではの後半インスト部が鮮やかな音で展開し、シンセの洪水とリズムの躍動性によるサウンド・ドラマが過去最高の音像で飛び出します。「Hey You」の冒頭が数秒欠落しているのは、このライブ後半の始まり方を御存じであれば或る意味仕方の無い事です。しかし本作では音のグレードが上がった事で、客電が点いた状態で急に演奏が始まったという周囲や場内の慌しいドキュメンタリー感が更に生々しく鮮明に伝わってくるのが逆の魅力となっています。「Nobody Home」と「Vera」では静かな響きの中で綴られる心象風景が実りあるサウンドでこちらに届きますが、どちらも自然で違和感の無い音の拡散と空間のプレゼンスに酔い痴れるでしょう。名曲「Comfortably Numb」は中?低音域がしっかり報告されることでオリジナル演奏の魅力が過去最高値で出ており、ややミドルレンジが軽めだった既発盤の音よりも密度と重厚さが感じられるぶん、より確かな聴き応えも備えています。終盤で入ってくるギター旋律の出音もこれまで以上に良く出ていますので御期待下さい。リフレインとなる「In The Flesh」ではアタックの強い音が既発盤よりも際立ち、後半に進むにつれてタフになる音像に圧倒されるでしょう。「Run Like Hell」も曲の運動性がこれまで以上に際立つ音で報告され、カッティングのギター・サウンドも解像度の高い鮮やかな音色で出ている事に気付かれると思います。キーボードの装飾音やSEが綺麗に聴こえるのも特筆され、より視覚に訴える映像的なサウンドとなっているのもトピックスです。「Waiting For The Worms」では低音域の解像度の高さが一層際立ち、曲の構造が更に見通しの良いサウンドで現れます。既発盤の3分47秒?51秒に存在していたノイズの様な拍手を今回は緩和した事も特筆され、これによって聴き易さと耳当たりの良さが向上しているのも本作のアドヴァンテージと言えるでしょう。「The Trial」ではシンフォニックな効果音と歌唱の対比が実りある音像で花開き、楽曲の意識下にあるロジャー特有の道化性が一層浮き出て感じられる筈です。壁崩壊の音も強烈で、ここはこれまで以上にラウドで明瞭感がある事にも気付いて戴けると思います。エンディング「Outside The Wall」も曲が持つ奇妙なカタルシスがリアルに報告されるので、聴き終えた後の充足感と好奇心の充たされ方は至福のものがあるでしょう。ファンにとっては今更ながらの話ですが、でもこの『THE WALL』について改めて注視したいのは、このアルバムは後に作られる映画版との相乗効果があるという点でしょう。音を聴き込んだ方が映画が分かり易くなりますし、映像が付く事によって初めて意味が通ってくるシーンが結構あるのは御存知の通りです。しかしその世界観にもっと深く入りたいなら、それはやはり当時のライブ音源を聴きこむに限ります。化粧され、整えられたサウンドのアルバム版には存在しない、生々しくピリピリした緊張感のあるライブ・サウンドでそれを体験してこそ、アルバムや映画を含めたこのコンセプトがより深く自分の中に入り込み、根を下ろしてゆく筈です。費用の問題やセット組み立ての複雑さから当時の公演回数は決して多くありませんが、だからこそTHE WALLのライブの魅力を最高値で捉えたものとして長年高い評価を受け続けてきたこの名録音が、真のマスターテープから24bit / 96khzにデジタル変換されて劣化の無いサウンドで聴ける本作が意味を成すのではないでしょうか。今週末は驚愕のマスターサウンドでTHE WALLライブの真髄に迫れる本作で、改めてこの世界観に身を投じて戴きたいと思います。 Live at Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, New York, USA 28th February 1980 ULTIMATE SOUND(UPGRADE) The 24 bit digital transfer from the original master cassette tape Disc 1(57:11) 1. Introduction 2. In The Flesh? 3. The Thin Ice 4. Another Brick In The Wall Part 1 5. The Happiest Days Of Our Lives 6. Another Brick In The Wall Part 2 7. Mother 8. Goodbye Blue Sky 9. Empty Spaces 10. What Shall We Do Now 11. Young Lust 12. One Of My Turns 13. Don't Leave Me Now 14. Another Brick In The Wall Part 3 15. Goodbye Cruel World Disc 2(53:51) 1. Hey You 2. Is There Anybody Out There 3. Nobody Home 4. Vera 5. Bring the Boys Back Home 6. Comfortably Numb 7. The Show Must Go On 8. Introduction 9. In The Flesh? 10. Run Like Hell 11. Waiting For The Worms 12. Stop 13. The Trial 14. Outside The Wall