いよいよ「これで本当に最後」とアナウンスされたU.K.の、2015年ファイナル・ワールドツアーの音源が遂に届きます。昨年末にエディのホームページ上で2015年にU.K.として最後のコンサートを行うと発表されてからこの時を複雑な気持ちで迎えられている方も多いのではないでしょうか。このファイナル・ツアーは既に今年2015年の2月22日からポーランドを起点としてレグ前半のヨーロッパ・ツアーを終えており、現在はレグ後半としての米国、そしてバンドの歴史を閉じる最終到達地としてここ日本での2公演(4月28日・大阪なんばhatch / 同30日・東京 中野サンプラザ)を控えているのは当店を御利用戴いている方であれば御存知でしょう。本作に収録されているのは既に終了したヨーロッパ・レグの終盤、3月1日・英国ロンドン公演初日のもので、現地在住の録音者本人から提供された、本作でしか聴けないオリジナル・マスターを使用しています(※ネット上にも一切公開されていません)。その音質は湿り気のある質感と見通し良好の透明度が際立つ高品位なものとなっており、現代デジタル・サウンドで対象にきっちりフォーカスした極上オーディエンス録音となっています。また演奏のグレードもテリーが戻った時期を除けばこれまでのU.K.リユニオンの中でトップクラスのものとなっていて、明らかに丁寧なリハーサルを重ねたのであろう事が伺える点も大きなトピックスでしょう。この様子は特にドナティと、そしてウエットンのパフォーマンスに大変顕著に現れています。こうしたパフォーマンス面での変化と向上をデジタル・ハイグレードな実況録音で愉しみながら、来日直前のファイナルU.K.最新の動きをしっかり把握出来るのが本作の特徴となっています!ショウスタートとなる「Thirty Years」は深い透明感に充ちたSE音の中から厳かに立ち上がります。見通しの良いそのサウンドはまるで漆黒の暗闇の中で月に照らされた湖面の様な繊細な質感があり、それが5分16秒からの演奏音が出た途端に鋭く砕け散ると、透明度の高い重厚な響きとなってファイナルU.K.のアンサンブルが力強く立ち上がります。その威力ある演奏と音の質感はこのオープニング曲から確実に聴き手を虜にするでしょう。「Nevermore」はメロウな曲想の中で揺れ動く各楽器の協奏的対話がつぶさに追えるのがポイントです。よく" 美人は骨格が美しい "と言われることがありますが、音の見通しと質感が良いので楽曲構造がスケルトン・モデルさながらに追ってゆける愉しさがここでのポイントと申せましょう。官能的な旋律が舞い上がり、序盤から目立つドナティの機知に富んだドラミングがエディのキーボードと激しく絡んでゆく中間部(特に3分46秒?)などは凶悪なまでに美しく、まさに音楽が香り立つ音色でこちらに向かってくるのをお感じになる筈です。「Carrying No Cross」では伸びのあるウエットンの生声と演奏が織り成す繊細な表現が潤い溢れる音色で飛び出します。終曲直前で浮上してくるベースの動き(10分33秒?)は、ウエットンらしいアタックの強い響きを出しながらキング・クリムゾンの「Epitaph」を髣髴させるフレーズを披露しており、興味深い聴き応えを残して曲を終えているのも特徴です。「Rendezvous 6:02」はピアノとウエットンの肉声が濃密に綴れ合い、オリジナルの2人だからこそ可能な前半と、2015年式とも言うべき新しい解釈で綴られる展開部(※2分20秒?)の対比が大変興味深いものとなっています。決して派手ではありませんが、しかし静かな情念の中で綴られるファイナルU.K.の魂の燃焼が感じられる素晴らしいシーンとなっており、この布陣による音楽的ボキャブラリーが増えたことを伺わせています。これはまさに21世紀型U.K.の新たな姿と言えるでしょう。ドラムソロの終わりから変化してスタートする「In The Dead Of Night」は躍動感に充ちた演奏が実の詰まったサウンドで飛び出し、溜めて吐き出す疾走感が強い筆致で描かれてゆく聴き応え満点のシーンとなっています。曲が変容する「By The Light Of Day」もリハを重ねた事を伺わせる丁寧な演奏で(特にウエットンの歌唱と演奏)、表現の隈取りやスケール感がしっかり滲み出ているだけに、ファイナルU.K.がメンバーの熱意ある営みによって動いている事をよく伝えています。「Presto Vivace And Reprise」での粒揃いなアンサンブルもバンドの纏まりの良さが垣間見え、立体的でドライヴ感を伴った極上の演奏が鮮やかな音像でお愉しみ戴けるでしょう。「Forever Until Sunday」では広がりのある響きが演奏力の確かさを後押しする様に花開き、時折入る曲のフックと共に変化に富んだ21世紀型の表現が濃淡豊かに綴られてゆく様子は圧巻です。「Caesar's Palace Blues」では運動性の高さが麗しい音質で追える喜びがあり、ヴァイオリン・ソロの突入前に短いブレイクを3箇所設けて観客に歌わせるなど、構成面での見直しも興味深いところです。「The Only Thing She Needs」もタフな音像で展開し、演奏の立体感と表情の多彩さが質の高いサウンドで現れる喜びに心踊るでしょう。中盤から後半に向かうビートに充ちた演奏には圧倒されるに違いありません。これの終曲と同時に「Carrying No Cross」がリプライズして終演するという構成も斬新で、最後までファイナルU.K.が用意した驚きと興奮に充ちた108分間となっています。去年ピンク・フロイドがその歴史に幕を下ろした様に、残念ながら" 憂国の四士 "達も後は4月の米国と日本での最終公演を残すのみとなってしまいました。熱心なファンが多いここ日本をバンドの歴史を閉じる為の最終公演地に選んだ事はバンド側だけでなく、私達日本のファンにとっても今年の大きな出来事となりそうです。この英国公演で確認出来る幾つかの楽曲の目覚ましい表現の変化は日本ではどの様に表現され、どの様に人々の心に刻まれるのでしょうか。また丁寧なリハを重ねた事が伺えるアンサンブルの一体感と表現力の幅は、4月の日本でどれほど高まってその満開の花を一斉に散らすのでしょうか。恐らく今度の大阪、そして特に中野サンプラザではかつて無いほどの「U.K.! U.K.! U.K.!」大コールが沸き起こるでしょう。その歓声に包まれる心の準備をしておく為にも本作は最適のタイトルとなる筈です。Under The Bridge, Chelsea Football Club, London, UK 1st March 2015 TRULY PERFECT/ULTIMATE SOUND(from Original Masters) Disc 1(63:58) 1. Thirty Years 2. Nevermore 3. Eddie Jobson Introduction 4. Carrying No Cross 5. Alaska 6. Time To Kill 7. Eddie Jobson Introduction 8. Keyboard Solo 9. Violin Solo 10. John Wetton Introduction 11. Rendezvous 6:02 Disc 2(44:13) 1. Drum Solo 2. In The Dead Of Night 3. By The Light Of Day 4. Presto Vivace And Reprise 5. Forever Until Sunday 6. Caesar's Palace Blues 7. The Only Thing She Needs 8. Carrying No Cross Reprise John Wetton - Bass, Vocals Eddie Jobson - Keyboards, Violin Virgil Donati ? Drums Alex Machacek ? Guitar