1976年 5月28日から8月22日まで、計53ステージ行われた「リレイヤー」リリース後のツアーは、5人が順次ソロ・アルバムを発表した時期でもあるため、通称「ソロ・アルバム・ツアー」と銘打たれることに。そのアメリカのみで行われた本ツアーの折り返し点となる、7月22日、カナダのヴァンクーバーでのショーを、当時としてはまずまず良好なオーディエンス・レコーディングにてほぼコンプリート収録。前年10月リリースのハウのソロ・アルバムから、この5月にリリースされたジョンソロまで、順に発表された作品の中から、日変わりで各々の曲をセットリストに組み込んだこのツアーは、長いイエスの歴史の中でもユニークかつ珍しいもので、熱心なファンからは評価の高いツアーとして知られるもの。さらにヨーロッパのコアなファンがレビューしているように、この日のパフォーマンスは70年代イエスのライブ史の中でもベストのひとつに挙げられており、とにかく勢いといい、キメといい、ジョンのヴォーカルといい、これ以上はあり得ないといえるテンションと超絶プレイの連続。まず、この時期のみの「火の鳥」に代わるオープニングS.E. "Apocalypse"に続くお馴染み"Siberian Khatru"からして、エンディングのキメで、アランがフィルを叩き、その後ハウの超絶ソロの後ろではクリスのバースト気味ランニング・ベースが炸裂。その爆走ぶりは次の"Sound Chaser”でのモラーツとのかけ合いも同様で、どちらがソロを取っているかわからないほど。そして"Gates Of Delirium"と"Ritual"でもクリスのリッケンが大暴れしており、もちろんこのツアーならではの、各メンバーのソロ・タイムも素晴らしく、そしてアンコールでは、イントロのセッション風アレンジがユニークな"Roundabout"でこの大狂乱はエンド。同ツアーからはサウンドボード音源も存在するものの、音質クオリティーへのこだわりなど吹っ飛ぶ最もアグレッシヴなパフォーマンスはファン絶対必聴。 さらにDisc:3には、本ツアー開始直前の5月ペンシルヴァニアで行われたツアー・リハの模様を、記録用に録音されたオーディエンス・レコーディングにて58分にわたり収録。スタジオの中にラジカセを置いて録られたもので、クオリティー的にはまずまずながら、クリスのヴォーカルが聞ける” Heart Of Sunrise”は超レア・テイクゆえ、こちらもファンは要チェック。