先日行われたばかりのブリティッシュ・ロックの重鎮URIAH HEEPと、ジョン・ロートン率いるLUCIFER'S FRIENDのカップリング来日。その極上ライヴ・アルバムが早くも登場です! URIAH HEEPの来日は5年ぶりですが、今回はいつもとは違う。大阪公演はなんと1991年以来の25年ぶりですし、カップリングのLUCIFER'S FRIENDは遂に実現した、念願の初来日なのです!そんな記念碑ジャパンツアーは、全3公演。大阪1回、川崎2回でした。本作が録音されたのは、そのうち「1月14日・大阪公演」。録音家は、もはやお馴染みの“西日本最強テーパー”氏です。西日本のライヴスペースを知り尽くしているという名匠ですが、特に今回の現場“Zeppなんば”は、彼の庭のようなもの。これまでも幾度も傑作をモノにしてきた会場で、最近でもジェフ・ベックやマイケル・シェンカー&グラハム・ボネット等々の名作を世に送り出してきました。もちろん、今回もその例に漏れない凄まじい録音。図太い楽音にどっしりとした低音、それでいて輪郭がクッキリと浮き立つサウンドは「サウンドボード録音ですよ」と言ったら通ってしまうほどのクオリティです。これほどのダイレクト感、さぞやPAの近くから録ったのだろう……と思いきや、実は2階席録音なのだそう。名匠曰く、HR/HMバンドのサウンドは低音の回り込みが多く、特にこの会場の1階で録ると輪郭がボヤけてしまうそう。そのため、楽音がバランス良く、しかも真っ直ぐに届く2階席での録音となったそうです。もちろん、2階席であればサウンドも遠くなってしまうはずなのですが、そこは名匠。機材・マイクのセッティングを駆使して、距離を感じさせないダイレクト・サウンドに仕上げているのです(機材で距離感まで変わるとは信じられずに具体的な手法も伺ったのですが、あまりにマニアックな話でまったく理解できませんでした。なんとも録音家の世界は深い……)。手法はともあれ、結果のサウンドがライン録音のように強靱でバツグンにクリアなのですから、それこそが名匠の腕の冴えを証明しているのです。そんな名匠のコレクション群の中でも、本作はひときわ輝き、まるでオフィシャル作品のようにさえ聞こえる。楽音の素晴らしさもさることながら、歓声・拍手がほとんどない。もちろん皆無ではなく、要所でバンドを湛える拍手もリアルではありますが、演奏中はほとんど観客の存在を忘れるほど。ちょうど、DEEP PURPLEのオフィシャル盤「MADE IN JAPAN」のようなバランスで、“バンドと自分”だけの世界に没頭できるのです。“最強”氏に伺ったところ、「ちょっと工夫があってね、周りに人がいなかったんだよ」と微笑んでいましたが、一体どんな工夫があったというのか……。そんなサウンドで捉えられたURIAH HEEP&LUCIFER'S FRIENDの記念碑公演。本作では、ディスク1・2にメインのURIAH HEEP、ディスク3にスペシャル・ゲストのLUCIFER'S FRIENDを配しました。まず、登場するURIAH HEEPですが、今回は“対自核45周年”が最大の売り。開演こそデビュー作の「Gypsy」ですが、それが終わるや「コンバンワ、大阪!」の一声で「Look At Yourself」が始まり、一気に歴史的名盤の世界が広がる。残念ながら「Tears In My Eyes」「What Should Be Done」を演奏しないのでアルバム丸ごと再現でこそありませんが、全7曲中5曲をアルバム通りの曲順で次々と繰り出していく……。この後の川崎公演では「July Morning」がショウ後半へ移動してしまったこともあり、本作こそがもっとも「対自核」ムードの強いライヴなのです。しかも、その演奏はオリジナルのムードをたっぷりと発散(ミック・ボックスのワウ全開!)しながら、現代的にアップデートもされている。もちろん、ムリヤリ現代風にアレンジしているわけではありません。URIAH HEEP自身が現役バリバリであるばかりか、当時から現在に至るまで毎年必ずステージに立ち続けてきた。まさに“継続は力なり”を体現する演奏力とリアリティに溢れるパフォーマンスの説得力が凄いのです。68歳を迎えたミックの現役感も凄いですが、バーニー・ショウの歌声も見事。考えてみれば、バーニーは歴代最長どころの話ではなく、約45年にURIAH HEEP史のうち、30年も歌い続けている。もはや、押しも押されもしないバンドの顔なのです。そうしたお馴染みのメンバーに加え、今回の来日で大きく株を上げたのがドラムのラッセル・ギルブルック。“まるでコージー・パウエルのようだ!”と大評判になっている真っ最中なのですが、それもそのはず。彼はコージーの後任としてBEDLAMで叩いていたという経歴の持ち主。パワフルな叩きっぷりはもちろんのこと、アイディアを尽くして曲を彩っていくパーカッシヴなスタイルは、まさにコージーを彷彿とさせる。そんな彼だからこそ、ロートル感がないのかも知れません。とにもかくにも、本作の「July Morning」後半の盛り上がりをぜひとも聴いてください。まるでコージーの「Mistreated」のような生まれ変わりぶり。彼は、本物の逸材です。「対自核」だけで長くなってしまいましたが、最大のききどころはラストの「Lady In Black」! この曲の中盤にジョン・ロートンが現れ、バーニーとデュエットするのです。夢にまで見た“ロートン&URIAH HEEP”がステージ上に現出する! あのヒロイックな声で綴られる幻想的なURIAH HEEPメロディ……。ロートン時代のURIAH HEEPはついぞ来日することがなかっただけに、まさに感無量のライヴ・イン・ジャパンです。そんなロートンの歌声が炸裂するのが、ディスク3のLUCIFER'S FRIEND。彼ももはや69歳になったわけですが、その美声の素晴らしいことと言ったら! 高齢化の著しいロック界にあって、いつの間にか加齢による衰えも気にしなくなっていましたが、彼にはそんな脳内補正もまったく不要。特に音声だけのライヴアルバムで聴くと、コブシを効かせまくったヒロイック・ヴォイスは全盛期のまま。かの歌神ロニー・ジェイムズ・ディオでさえ、60台半ばには声の張りを失っていったというのに、なんというシンガー、なんという超人なのでしょうか。これほどの名シンガーの生声に触れるまで、45年もかかってしまったとは。もっと早く、それこそ、もしURIAH HEEP時代に来日していたら、ロニーやグラハム・ボネットにさえ引けを取らない人気を得られただろうに……。まったく、日本の洋楽界の知られざる損失です。記念すべきLUCIFER'S FRIEND初来日の初日にして、25年ぶりに実現したURIAH HEEPの大阪公演。その全貌を捉えた大傑作録音です。URIAH HEEPを愛し続けた方はもちろん、ファンタジックな様式美に目のない方には、無上の喜びが詰まった3枚組です。ぜひ、名匠が腕によりをかけた記念碑ライヴアルバムを存分にご堪能ください! Live at Zepp Namba, Osaka, Japan 14th January 2016 ULTIMATE SOUND(from Original Masters) URIAH HEEP Disc 1 (46:40) 1. Intro 2. Gypsy 3. Look At Yourself 4. I Wanna Be Free 5. July Morning 6. Shadows Of Grief 7. Love Machine 8. The Law 9. The Outsider Disc 2 (55:58) 1. Sunrise 2. Stealin' 3. The Magician's Birthday 4. One Minute 5. Can't Take That Away 6. Bird Of Prey 7. Easy Livin' Encore: 8. Lady In Black (with John Lawton) 9. Outro. (Land Of Hope And Glory) Mick Box - lead guitars, backing vocals Phil Lanzon - keyboards, backing and lead vocals Bernie Shaw - lead vocals Russell Gilbrook - drums, percussion Davey Rimmer - bass Disc 3(66:55) LUCIFER'S FRIEND (66:55) 1. Wake Up Call 2. Pray 3. Fire And Rain 4. In The Time Of Job 5. Keep Goin' 6. Hey Driver 7. Riding High 8. Moonshine Rider 9. Did You Ever 10. Burning Ships 11. Member Introduction 12. Ride The Sky 13. Rock 'n' Roll Singer / High Flying Lady - Goodbye 14. When You're Gone John Lawton - vocal Peter Hesslein - guitar Dieter Horns - bass Jogi Wichmann - keyboards Stephan Eggert ? drums